「パミール」というカラーベスト(スレート材)をご存じでしょうか?
窯業系サイディングのトップメーカーのニチハが、本格的に屋根材分野に乗り出すため、1996年から製造販売された屋根材です。
アスベストが人体に悪影響を及ぼすと言われ始め、他社に先駆け「無石綿(ノンアスベスト)」「軽量」を掲げて大々的に発売されました。
最終的には2008年まで発売しており、トータル13年間、年間25,000棟分販売され、全国で30万棟ほどパミールが載っていると言われています。
アスベストを使っていないので、人体や環境に優しいのですが、年数が経つにつれ劣化が激しく、特に冬場の寒さが厳しい地域では劣化の報告が多く聞かれ、特に屋根の北面に劣化の症状が多くみられます。
症状としては、パミールの下端部が白化し始め、劣化が進行するとミルフィーユのように何層にも剥がれ始めます。
屋根ということで直接の確認が困難で、なかなか気付きにくい箇所ですが、劣化がひどくなると遠目に見ても、何か屋根が毛羽立ったように見えます・・・。
こうなると剥がれた塗装面が反り返っており、症状は末期になっており、雨漏りも心配され葺き替えが必要になっています。
通常のカラーベストのお手入れは塗装をするのですが、パミールの場合、基本的に避けた方が賢明です。
劣化が始まる前なら特殊な下塗り材等や塗料を使用したりして、劣化を遅らすことは出来ますが、すでに販売中止になってから10年以上経っている現状では、何らかの劣化が始まっていると考えられ塗装をしてもその効果は大幅に低くなってしまいます。
塗装後数年で再度剥がれ始める可能性があるので保証は付けれず、お勧めは出来ません。
何十万円も掛けて塗装しても、結局葺き替えしなければいけなくなってしまっては、お金を捨ててしまうようなものですから・・・。
(逆に言えばパミールは塗装してはいけない製品とも言えます。)
20年以上経っているならともかく、10年程度でこのような症状が起これば、お客様は当然ですが私としても納得がいきません。
欠陥とまでは言いませんが、明らかに問題のある製品には間違いないと思います。
構造的には何層もの基材を貼り合わせて造られている複層構造となっており、その接合材にアスベストを使わず、代わりにパルプ材を使用しているのですが、やはりアスベストの性能には遠く及ばず、時間が経つにつれてその層が分離し剥がれてくるのです。
元々湿式と呼ばれる製法で作られており、含水率が20%程と高い中で、雨で濡れることで層間の水分がさらに高まり、特に冬場に凍るような地域では膨張、そして乾燥。
これが繰り返されているうちに層間が分離してしまうのです。
他社が採用した1つに固める製法の単層構造は、施工時等で屋根に上った時に割れやすく、後日ズレ落ちるリスクがあり、危険とのニチハの判断から複層構造を採用したのですが、このような症状が起こるようでは問題です。
月日が経つにつれこのような症状を起こしている事例が増え、現在では一部社会問題となっており、最近はネットでかなり見受けられます。
以前、関西の毎日放送の報道番組でも特集が組まれ、問題視されました。
全てのお宅でこのような症状が起こっているわけではないのですが、個人的に構造や製法に問題があると思っていますので、今は問題なくても、いずれどこかのタイミングでこの症状は起こります。
この事に私が気付いたのは2011年頃、当時某住宅メーカーに所属しており、築10年での建物のお手入れや太陽光発電のご提案をしていた時でした。
当時の私の個人的なカラーベストの認識は、築15~20年で屋根の塗装で十分と考えており、会社としても同様で築10年ではコーキングの打ち替えやバルコニー防水の提案をしていましたが、カラーベストに対しては積極的なお手入れの提案をしていませんでした。
事実それまでのカラーベストは、20年以上経っても、退色し白くなっていても、そのような症状を起こさず問題なかったからです。
そんな中でお客様から、バルコニーや家の周りに何か黒い破片がいくつも落ちているというお話があり、調査をするとカラーベストの表面が無数に剥がれている状態でした。
すぐにメーカーに伝え、メーカーの担当者同行の再調査を行った後の結果報告を受けると「経年劣化」との見解。
お客様を含め納得いかないので何度も協議したのですが、メーカーの結論は変わらず仕舞いでした・・・。
結果、会社に掛け合い何とか無償で塗装を行いましたが、今となっては苦い思い出になっています。
その時パミールの問題に関して世間でもほとんど知られておらず、(現在でも知らない業者がほとんどです)
何の知識もなく再塗装したのですが、現状では再度同様な状態になっているからです・・・。
その後も同様な症状を起こしているお客様が増え、葺き替えをして頂いたお客様のお宅はかなりの数になります。
2001年頃から2007年頃まで標準仕様として採用しており、年間100棟ほど建築していた会社だったので、当然その数はかなりになりますね。
瓦や陸屋根のお宅もあったのでその全てではありませんが、6~7割はパミールで施工していたと思います。
問題が確認される度にニチハと交渉してきましたが、基本的に「元々保証製品ではない」、そして「経年劣化」であるとの一点張りで、特に10年を超えた案件に関してはメーカー責任を一切認めません。
ただし、パミールを留める釘に関しては出荷したものの中に、一部塗膜が薄いものがあり、錆びて外れ、ズレたり落下したりする事例があるとして、釘に問題があれば無償で対応してしています。
これは釘に問題があるとして、ニチハには責任はなく釘を製造し納入している会社が問題だと損害賠償を求め係争中という裏事情があったりするんですが・・・。
この件に関してもリコール案件でなく安全対策上のものとしての対応で、当然パミール自体の症状に対しては経年劣化との判断のもと、リコール対象でないとの見解からパミール問題はメーカーとして積極的にアナウンスしていません。
会社責任を認めないニチハの姿勢は、一流の大手建材メーカーとして疑問が残ります。
またお客様からニチハに問い合わせても、販売しているのは工務店や仲卸業者であって直接販売していないとの言い分で、お客様から直接ニチハに交渉しても工務店等を通してくれと言われて、まず取り合ってくれません。
基本的には全く取り合わないのですが、これまでの経験上、内容や条件によりますが、何らかの妥協案を引き出せる場合があります。
お時間はかかるかもしれませんが、お客様の立場になって協力させて頂きます。
お困りの方や、屋根が気になる方は一度ご相談下さい。
まずは使用されている屋根材の製品を確認し、劣化状態を無料で調査します。
少しでもお客さんの負担を減らせることが出来るかもしれません。